The 83rd Meeting of the Japanese Society for Compensation Science
日本賠償科学会 第83回研究会
せん妄と賠償科学・医療安全を考える
〜事故扱いから心遣いへ〜
2024・6・1(土)
午後1時
AP浜松町
ライブ配信あり
知られざるせん妄の世界
2023年3月に他界した世界的音楽家 坂本龍一さんは、直腸がんと戦う中、手術に臨みました。
不運なことに、術後すぐに、彼はせん妄に苦しみます。
坂本さんは、手術直後であるにも関わらず、
・「会議に遅れそうだ」とメッセージを送り
・翌日には、韓国の病院にいると思い込み
・テレビCMの音楽が頭の中で繰り返し
・コンピュータがハッキングされたと感じ
・手が思うように動かなかった
といった幻覚を体験します。
のちに、坂本さんは
「事前に予測できなかったのは、術後のせん妄でした。(中略)こればっかりは医者にも、どうにもできないらしい。」と述べています(*)。
(*)
坂本龍一「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」新潮社(2023年)13−14頁(https://www.shinchosha.co.jp/book/410603/)
しかし、せん妄の最新の研究によると、せん妄は、スクリーニングしてモニタリングすることで、せん妄発症を事前に予測することが可能で、せん妄を早期に発見し、医療介入することができるようです。
もはや、せん妄は、「どうにかなる」病態です。
逆に、せん妄状態を放置すると、入院予後に影響したり、入院期間が伸びたりするだけでなく、転倒・転落、チューブ抜去、院内徘徊が増加したり、退院後の死亡率が高まったりします。
有害事象が発生した場合、家族から責任追及される可能性もあるでしょう。
せん妄は、がん患者や疾病による入院患者だけでなく、交通事故の被害者にも発症する症状です。
坂本さんのように、せん妄で苦しむ人が少しでも減るように、また、せん妄により転倒したり点滴チューブを外したりする事故が起きないように、本研究会のテーマを企画しました。
会員の皆様だけでなく、保険事故に関係する方々、患者の皆様、多くの医療者の方々のご来場をお待ちしています。