The 83rd Meeting of the Japanese Society for Compensation Science

日本賠償科学会 第83回研究会
せん妄と賠償科学・医療安全を考える
〜事故扱いから心遣いへ〜
2024・6・1(土)
午後1時
AP浜松町
ライブ配信あり
基本用語のご紹介
せん妄(Delirium)・医療安全(Patient safety)・インシデント/アクシデントレポート(incident, accident report)
せん妄(Delirium)
せん妄は急性の脳機能不全のことをいい、注意障害を基本とした精神神経症状の総称です(Lipowski ZJ. 1983)。
せん妄を発症すると、それ自体による精神的苦痛やコミュニケーション障害が認められるだけでなく、身体症状の発見の遅れやコントロール不良に繋がり、入院日数の増加、死亡率・再入院率の上昇など予後に影響することが知られています(Joost Witlox et al. 2010ほか)。
せん妄には、過活動型(hyper active)、低活動型(hypo active)、混合型(mixed)というサブタイプがあります。
典型的な症状は、次のようなものです。
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意識の変動:混乱、興奮、昏睡など、意識レベルが変動します。
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認知機能の障害:注意力の散漫さ、思考の混乱、記憶の障害、言語の混乱など、認知機能が影響を受けます。
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知覚の異常:視覚や聴覚の幻覚、妄想、錯覚など、現実感覚が乱れることがあります。
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睡眠の障害:昼夜逆転、不眠、過度の眠気など、睡眠パターンが乱れます。
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感情の変動:興奮、不安、怒り、抑うつなど、感情の変動がみられることがあります。

医療安全(Patient safety)
医療安全(Patient Safety)は、医療提供の過程で患者が安全かつ適切なケアを受けることを確保するための取り組みや原則です。医療安全の目的は、医療に関連するエラーや事故を最小限に抑え、患者の健康や生命を保護することです。
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エラー予防: 医療現場での誤診や治療ミスなどのエラーを最小限に抑えるため、正確な情報収集やコミュニケーション改善、手順やガイドラインの遵守が重要です。
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品質管理: 医療機関では、品質管理システムの導入や定期的な評価、改善活動、リスク管理が行われます。
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情報技術の活用: 電子カルテや医療情報システムなどの活用により、正確な情報共有や医療エラーの追跡・分析、リマインダーやアラートの提供が可能となります。
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コミュニケーションと協働: 医療チーム内の効果的なコミュニケーションと協力が重要であり、医師、看護師、薬剤師などが連携して患者のケアを行います。
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患者参加の促進: 患者の情報提供や教育、意思決定への参加を重視し、患者自身がケアに積極的に参加することが求められます。

インシデントレポート
アクシデントレポート
(incident accident report)
インシデント/アクシデントレポートは、医療現場や他の組織において、起こった事故や医療エラー、問題点などを文書化する報告書です。
インシデント/アクシデントレポートの主な目的は、事故やエラーの詳細な記録と分析を通じて、再発防止や改善策の立案に役立つ情報を提供することです。これにより、医療安全の向上が図られます。
レポートには、インシデントやアクシデントの詳細な説明、発生した背景や原因、関与したスタッフや関係者、対応策、さらには予防策や改善提案などが含まれます。具体的なデータや証拠、関係者の証言などが記録されることもあります。
インシデント/アクシデントレポートは、適切な手順に従って作成されます。関係者は、事故やエラーが発生したことをすみやかに報告し、必要な情報を提供します。レポートは通常、内部の品質管理部門や安全委員会、監督機関などに提出されます。
インシデント/アクシデントレポートでは、関係者のプライバシーや匿名性が保護されることが重要です。報告者や関与者の情報は機密とされ、適切なプライバシー保護措置が取られます。
インシデント/アクシデントレポートは、事故やエラーの分析に活用されます。原因の特定や傾向の把握を通じて、類似の問題を未然に防ぐための改善策や予防策が立案されます。組織全体での学習や医療プロセスの改善に役立ちます。